ホルモンバランスが乱れるとどうなるの?
「なんだか疲れやすい……」
「やる気が起きず、お肌の調子もいまいち……」
特に身体のどこが悪いというわけではなく、なんとなく調子が悪いということはありませんか?その不調は、ホルモンバランスの乱れが原因かもしれません。ホルモンのバランスが崩れると、精神的、肉体的に不調を引き起こします。
そこでここでは、ホルモンバランスに着目し、ホルモンの乱れの原因やそれに伴う症状、不調を軽減させる改善策についてくわしく解説します。
ページの監修医師
池袋アイリス婦人科クリニック
加村和雄(かむらかずお)院長
1998年埼玉医科大学医学部卒業。病院やクリニックにて、日本産科婦人科学会専門医として研鑽を重ね、池袋アイリス婦人科クリニックを開院。
目次
女性ホルモンのバランスは乱れやすい?
女性ホルモンは、女性特有の器官である卵巣で作られるホルモンです。女性ホルモンには、エストロゲン(卵胞ホルモン)とプロゲステロン(黄体ホルモン)があります。この2つのホルモンは、およそ1ヵ月の中で増減を繰り返し、月経をコントロールしており、妊娠・出産にも大きな影響を及ぼしているのです。
月経周期の中で分泌量が大きく変化することから、女性ホルモンのバランスは非常に繊細で乱れやすいといえるでしょう。
エストロゲン(卵胞ホルモン)とは?
エストロゲンは卵胞ホルモンと呼ばれ、卵巣から分泌される女性ホルモンです。エストロゲンは、「女性らしい身体づくり」を担うホルモンで、思春期の女子が女性特有の丸みを帯びた身体つきになるのを促します。12歳ごろの女子が初潮を迎えるのも、このホルモンの分泌量が増加するからです。エストロゲンは、やがて閉経を迎えるまで、増減を繰り返します。
プロゲステロン(黄体ホルモン)とは?
プロゲステロンは、黄体ホルモンと呼ばれ、エストロゲンと同様に卵巣から分泌される女性ホルモンです。プロゲステロンは、「妊娠に適した身体の環境づくり」を担うホルモンで、受精卵のために子宮内膜を熱くふかふかにしたり、体温を高くしたりする作用があります。妊娠が起こらない(着床しない)ときは、プロゲステロンの分泌が減り、子宮内膜が剥がれ落ちて生理が始まるという仕組みです。
つまり生理は、エストロゲンとプロゲステロンがバランスよく分泌されることで、起こる身体の変化。この2つのホルモンは生理や妊娠のためになくてはならないものなのです。
ホルモンバランスの乱れチェックリスト17項目
ホルモンバランスの乱れを簡単にチェックするチェックリストをご用意しました。皆さんもぜひ試してみてください。チェックの数が多ければ多いほど、ホルモンバランスが乱れている可能性が高いです。
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月経周期が乱れがちである(生理不順)
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生理痛がひどい
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身体や顔がむくみやすい
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過度なダイエット経験がある
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疲れが取れない、または疲れやすい
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睡眠不足である、または熟睡できない
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肌の調子が悪く、吹き出ものがひどい
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髪の毛がパサつく、白髪が目立つ
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気分が落ち込み、元気が出ない
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ヒゲやすね毛が生えてきた
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ストレスが溜まりやすい
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些細なことでイライラしがちである
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冷え性である
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肩こりや腰痛に悩んでいる
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めまいや立ちくらみを起こすことがある
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食事内容が偏っている
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不規則な生活習慣である
ホルモンバランスが乱れる原因
ホルモンバランスが乱れる原因は、わたし達の何気ない日常の生活の中に潜んでいます。まず考えられる1つ目の原因は、「老化」です。老化は誰にでも起こり、決して抗うことはできません。年齢を重ねていくと、ホルモンの分泌量が減っていってしまうからです。若い頃は十分に分泌されていたホルモンが減ってしまうことで、歳を取ると徐々に体の不調を覚えやすくなります。
次に考えられる原因として、「ストレス」が挙げられるでしょう。特に女性はストレスに弱いとされており、自分自身は気に留めないようなストレスでもホルモンの分泌に影響を与えることがあります。外気の気温差やダイエットといった日常の何気ない要因でも、ホルモンバランスを左右することがあるのです。
そして「不規則な生活」も、ホルモンのバランスに多大な影響を与えます。睡眠不足が続いたり、バランスの偏った食生活をしたりしていると、身体の中でホルモンバランスがみるみるうちに崩れ、心身の不調を感じやすくなるのです。
ホルモンバランスの乱れによって起こる症状
では、ホルモンバランスが乱れるとどのような症状が起こるのでしょうか?ここからは、女性に起こりやすい症状にフォーカスを当て、それぞれくわしく見ていきましょう。
生理不順
ホルモンバランスが崩れたときにもっとも影響を受けやすいのが、生理(月経)です。生理は前述したように女性ホルモンによってコントロールされているため、ひとたびそのバランスが崩れると明らかに狂いが生じてしまいます。それが生理不順です。症状として、生理が月に2回きてしまうような頻発月経、前の生理から39日以上経っても次の生理がこない稀発月経、3ヵ月以上生理がこない無月経があります。
更年期障害
更年期障害は、加齢に伴い卵巣の働きが衰え、エストロゲンの分泌が急激に減少することで起こります。エストロゲンの減少によって、身体のさまざまな機能がうまく働かなくなってしまうのです。その症状には個人差がありますが、精神的・肉体的双方に影響を及ぼします。更年期で起こりやすい症状は下記です。
- 頭痛・のぼせ・腰痛・発汗・不眠・動悸・イライラ・肩こり・皮膚のかゆみ・めまい・胃もたれ・気分の落ち込み・疲れやすさ・腟の乾燥・ドライマウスなど
PMS/月経前症候群
PMS(月経前症候群)は、女性ホルモンの関連性が強く疑われている疾患です。はっきりとした原因はわかっていませんが、ホルモンと神経伝達物質、生活習慣、ビタミンや食事など多様な要因が関係しているとされています。症状は生理前のイライラ感や情緒不安定、むくみ、胸の張り、肌荒れ、体重増加などです。心身ともにつらい症状が現れ、悩んでいる女性は多くいます。
不妊
ホルモンバランスの乱れは、不妊の原因にもつながります。生理周期の乱れや月経量の異常、極端な肥満や痩せ、性感染症(STD)などの症状が見られることが多いです。
自律神経失調症
自律神経のバランスは、身体的ストレス・精神的ストレスによって崩れることが多くなっています。また、ホルモンバランスの乱れが、自律神経の乱れを引き起こすこともあるので注意が必要です。自律神経失調症の症状は下記です。
- めまい・ふらつき・のぼせ・冷え・疲れやすさ・頭痛・耳鳴り・動悸・関節の痛み・便秘・下痢・口や喉の不快感・頻尿・残尿感・発汗など
女性ホルモンのバランスを改善するには?
ホルモンバランスの乱れを改善させるには、どのような方法があるのでしょうか?わたし達が普段の生活の中で行える改善策について見ていきましょう。
食事内容を考える
規則正しく栄養のバランスが取れた食事を摂ることが大切です。バランスの良い食事は、ホルモンバランスを整えるだけでなく、健康的な心と身体づくりにも適しています。特に女性ホルモンであるエストロゲンに似た働きをする、イソフラボンを含んだ大豆食品を積極的に摂る方もいるようですが、一つの食材に偏るのではなく、まんべんなくさまざまな食材を適量食べるといいでしょう。発酵食品や食物繊維を多く含んだ食材もおすすめで、メニューは和食中心が良いとされています。
規則正しい生活を送る
規則正しい生活を送ることも、ホルモンバランスを整えるのに必要不可欠な要素です。特に質の良い睡眠はホルモンだけでなく、身体のさまざまな調子を整えるのにとても効果的。質の良い睡眠は、単に睡眠時間の長さだけでなく、睡眠の深さも重要なポイントです。深い睡眠を促すために、寝る直前のブルーライトは避ける、日中に太陽の光を浴びる、適度な運動を行う、入浴をするなど、ちょっとした工夫をすると良いでしょう。
寝室の環境を整えることも忘れてはいけません。気持ちよく寝るためにも、日中活動的に過ごすと、さらに身体の調子が整います。
ストレスを溜めない
ホルモンの分泌は、精神的ストレス・肉体系ストレスに大きく影響を受けます。現代社会はストレスを受けやすいとされていますが、上手に発散させストレスを溜め込まないようにしましょう。気軽に始められそうなストレス発散方法を挙げます。
- ・軽い運動をする
(ストレッチ・ヨガ・ウォーキングなど) - ・趣味に没頭する
- ・お気に入りの音楽・映画鑑賞
- ・日光浴をする
- ・好きなものを食べる
- ・生活にアロマを取り入れるなど
これらの他にも、思い切り笑ったり、ときには泣いたりするなどもいいでしょう。
適度な運動を行う
適度な運動は、睡眠の質を上げたり、ストレスを発散させたりするのにも効果的ですが、運動によって血行が促進されるので、脳や生殖器官などが活性化し、ホルモンの分泌が促されるという効果も期待できます。軽い負荷の筋トレやウォーキングなどの有酸素運動、ヨガやストレッチ・ピラティスなどもおすすめ。無理のない範囲でできるエクササイズを取り入れてみてはいかがでしょうか?運動不足による体重増加を防ぐ効果もあります。
サプリメントや漢方薬を取り入れる
女性ホルモンのバランスに効果があるといわれているサプリメントが、数多く販売されています。エストロゲンに近い働きをする、イソフラボンを含むものが代表的かもしれません。その他の成分として、ビタミンB群、ビタミンE、亜鉛などが挙げられます。これらのサプリを栄養補助として取り入れてみるのもいいでしょう。
東洋医学で有名な漢方薬の中にも女性ホルモンに効果があるとされるものがあります。加味逍遙散(かみしょうようさん)、桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)、当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)などが代表的です。
サプリメントは栄養補助食品ですし、漢方薬は自然の生薬由来で、どちらも劇的に効果が見込めるものではありません。これらに頼り切りになるのではなく、力を借りるくらいの気持ちで取り入れるといいでしょう。
婦人科でも相談できます!
ホルモンバランスの乱れは、さまざまなつらい症状を引き起こします。特に女性はホルモンバランスが乱れやすく、生理周期の中で体調に大きな変化が起こりやすいです。女性特有の不調である生理不順や、閉経前後の女性を苦しめる更年期障害のお悩みは、婦人科で相談ができます。
池袋アイリス婦人科クリニックでも、生理のお悩みを始めとする、ホルモンバランスの乱れが疑われる症状に対応しております。「この症状、ホルモンの影響かも……」など、心身の不調にお気づきの際は、お気軽に当院にご相談ください。
女性ホルモンに関するよくあるご質問
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ピルを飲むとホルモンバランスが整いますか?
はい。低用量ピルを服用すると排卵が抑制されるため、乱れていたホルモンバランスが改善する効果が見込まれます。そのため、生理不順の方でも規則的に生理がくるようになったり、生理痛が和らいだりします。低用量ピルには避妊だけでなく、さまざまな副効用が期待できるというわけです。女性特有の症状、生理不順・生理痛などにお悩みの方は、ぜひ池袋アイリス婦人科クリニックにご相談ください。
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ホルモン検査をすると現在のホルモンバランスの状態が分かるのですか?
ホルモン検査と一口に言っても、さまざまな種類の検査があり、一概にはいえません。女性ホルモンの検査には、エストラジオール(エストロゲン/卵胞ホルモン)検査、プロゲステロン(黄体ホルモン)検査、FSH(卵胞刺激ホルモン)検査、LH(黄体形成ホルモン)の検査、プロラクチン検査、AMH(アンチミューラリアンホルモン)検査があります。患者様の症状やお悩みによって検査内容が異なるため、まずは池袋アイリス婦人科クリニックまでご相談ください。
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無理なダイエットの後、生理がきません。病気ですか?
過激なダイエットは、ホルモンバランスの乱れを引き起こす原因になります。生理がこない原因がホルモンの乱れだけであれば、病気と決めつけることもないでしょう。しかし、重大な婦人科系の疾患が隠れている可能性も否定できません。一度、池袋アイリス婦人科クリニックを受診してください。生理がこない原因について、くわしく診察を行い、確かめましょう。
INFORMATION
- 2024/11/01
- 日曜日・月曜日は休診日となります。