性交痛(奥の痛みと入り口の痛み)の原因と治療法

Coital Pain

性交痛|奥や入口が痛い原因と治し方

性交痛とは、性行為中に感じる外陰部や膣内の痛みです。性交痛の原因はさまざまで、心理的要因から個人の体質、疾患まで幅広く考えられます。

中には早めの治療が必要なケースもあり、放置すると痛みが増したり疾患が進行したりする可能性があります。

この記事では、性交痛を感じる原因を部位別に解説し、婦人科でできる性交痛の検査や治療の選択肢についても触れていきます。

ページの監修医師

ページの監修医師加村和雄院長

池袋アイリス婦人科クリニック
加村和雄(かむらかずお)院長

1998年埼玉医科大学医学部卒業。病院やクリニックにて、日本産科婦人科学会専門医として研鑽を重ね、池袋アイリス婦人科クリニックを開院。

目次

入口に痛みがある性交痛の原因

  1. 1.緊張・不安・ストレスなど心理的要因
  2. 2.前戯が不十分
  3. 3.性器周辺のけが
  4. 4.性感染症
  5. 5.先天的な処女膜の異常
  6. 6.女性ホルモンの低下(萎縮性腟炎など)
  7. 7.ラテックスアレルギー

主に挿入時に外陰部や膣入口周辺に痛みを感じる場合を指します。適切な対処法は原因によって異なるため、自分の症状がどの原因に当てはまるかを知ることが大切です。

01.緊張・不安・ストレスなど心理的要因

性交痛に悩む女性のイメージ

不安や緊張によって十分に興奮できず、膣分泌液が十分に出ない状態(いわゆる「濡れていない状態」)だと、摩擦によって挿入時に痛みを感じやすくなります。

コミュニケーションによってパートナーとの信頼関係を高めるほか、相手に不安やストレスを感じている原因を伝えてお互いの理解を深めましょう。痛みで性行為が続けられない場合は、無理をせずに性行為を中断してください。

02.前戯が不十分

女性は前戯によって興奮が高まり、下半身への血流がよくなることで膣分泌液が増加します。

十分な前戯がないままに挿入を行うと、乾燥による痛みを感じたり、粘膜を傷つけたりするほか、性行為=痛いというイメージが定着し、心理的な要因による性交痛につながる可能性があります。

03.性器周辺のけが

外陰部や膣入口周辺の傷や腫れが、挿入時の痛みの原因になることがあります。VIOをカミソリで剃毛している際にできた傷、ぶつけて衝撃を受けた際の腫れなどが要因として考えられます。性器周辺を怪我している場合は、傷口から細菌が入って炎症を起こす可能性があるため、挿入を控えて怪我の治りを待ちましょう。

04.性感染症

性交痛の原因になる性感染症(性器クラミジア感染症・淋菌感染症・トリコモナス症・性器ヘルペスウイルス感染症・膣カンジダ)

性感染症は、性行為時に膣口の痛みを引き起こす場合があります。性交痛のほかにも、排尿痛やおりものの変化、外陰部の赤みなどの症状が表れたら、性感染症の可能性が高いといえます。放置しても自然治癒しないため、早めにクリニックで検査を行いましょう。

05.先天的な処女膜の異常

処女膜強靭症の図解

処女膜強靭症は、処女膜が通常より厚く硬く、挿入時にも破けずに張っている状態です。先天性のもので、男性器の挿入時だけでなく、指やタンポンを入れた際にも激しい痛みが生じます。治療には切開による手術が行われます。

池袋アイリス婦人科クリニックでは、処女膜強靭症の治療を行っています。くわしくは処女膜強靭症のページをご覧ください。

06.女性ホルモンの低下(萎縮性腟炎など)

萎縮性腟炎を図解

更年期や閉経後の女性ホルモン(エストロゲン)が低下すると、膣粘膜が薄くなり乾燥しやすくなります。そのため、性的興奮が高まっても、挿入時の摩擦で痛みが生じるケースがあります。

乾燥によって細菌が繁殖し、「萎縮性腟炎」を誘発する女性も少なくありません。治療には、エストロゲンを補うホルモン補充療法が行われます(池袋アイリス婦人科クリニックでの取り扱いはございません)。

07.ラテックスアレルギー

ラテックス(天然ゴム)のアレルギー反応により、コンドームの使用で局所的な痛みや痒み、炎症が生じる可能性があります。症状がある場合はラテックスフリー素材のコンドームに変更しましょう。コンドームを使わない性行為は、望まない妊娠や性感染症のリスクを高まるため、控えましょう。

奥に痛みがある性交痛の原因

  1. 1.子宮頸部、子宮、卵管の感染症
  2. 2.子宮内膜症
  3. 3.子宮筋腫
  4. 4.骨盤内の腫瘤

性行為時の膣の奥や骨盤内に痛みは「深部性交痛」と呼ばれ、骨盤内臓器の感染症や腫瘍など何らかの器質的(臓器に異常が起きている)疾患が考えられます。

自覚症状だけでは判断が難しいため、体調の変化や痛みに気付いたら、婦人科クリニックの受診を検討しましょう。

1.子宮頸部、子宮、卵管の感染症

卵管と子宮頚部の炎症を図解

子宮頸部、子宮体部、卵管など、骨盤内臓器に炎症がある状態を「骨盤内炎症性疾患」といいます。骨盤内炎症性疾患は主に性行為による細菌の感染で生じ、重度の場合、感染が卵巣(卵巣炎)、そして腹膜(腹膜炎)に広がり、強い痛みを引き起こします。

性行為時に奥の痛みを感じるほか、おりものの増加や、月経時でないのに出血する不正性器出血があります。

02.子宮内膜症

子宮内膜症とは、通常は子宮内部にしかない子宮内膜組織が、子宮の外に増殖する疾患です。20~30歳代女性の発症が多く、月経痛や不妊症の原因にもなります。

初期は月経時以外に大きな症状がありませんが、進行すると月経時以外にも下腹部痛や排便痛を引き起こします。経血量の増加を訴える患者様も少なくありません。

03.子宮筋腫

子宮筋腫を図解

子宮筋腫は、子宮の壁にできたこぶのような腫瘍です。がんのような悪性の腫瘍ではありませんが、経血量が増えたり、貧血や痛みを引き起こしたりします。筋腫が小さく、症状がない場合は経過観察のみで問題ありません。

しかし、筋腫の大きさや個数、できた部位によっては性行為時に強い痛みを引き起こすほか、妊娠しにくい、流産しやすいなどの症状がみられるケースもあります。

04.骨盤内の腫瘤

子宮頸部や子宮体部のほか、骨盤内の臓器(小腸、膀胱、尿管、骨格筋、骨)に腫瘤と呼ばれる、しこりやできものが生じると、男性器の挿入時に痛みを引き起こす可能性があります。

腫瘤の種類は年齢層によって異なり、思春期から閉経後の女性まで腫瘤が発生する可能性があります。性交痛のほかにも、下腹部のしこりや張りに気付いたら、早めに婦人科を受診しましょう。

婦人科でできる性交痛の治療

池袋アイリス婦人科クリニックでは以下の治療を行っています。

性感染症

性感染症は性交渉を介して感染する病気です。見た目の症状が現れにくい性感染症もあり、性交痛の原因になることがあります。性交痛が続く場合は、婦人科で検査を受けましょう。

性感染症の検査項目や費用については性感染症のページをご覧ください。複数の性病がまとめてチェックできるセット検査のご用意もあります。

クリニックの受診が難しい方は、オンライン診療ができるメディカルポストで性病検査キットを郵送しています。結果が陽性だった場合は、治療薬も郵送でお届け可能なため、誰にも知られずご自宅で検査と治療が行えます。

骨盤内臓器
(膀胱、子宮、子宮頸部、卵管、卵巣など)の検査

骨盤内臓器の異変は、性交時の痛みの原因になる可能性があります。子宮や卵巣などの臓器に感染症や腫瘤がある場合、不妊になったり流産しやすくなったりするケースも少なくありません。外側からでは異変が分からないため、違和感に気付いたら早めに婦人科を受診しましょう。

婦人科健診の検査項目や費用については婦人科検診のページをご覧ください。

処女膜強靭症

処女膜強靭症は処女膜が厚く硬いため、男性器を挿入しようとするとすると、膣口に激しい痛みをともないます。先天性な症状であり、自然治癒はしないため、処女膜強靭が疑われる場合は、池袋アイリス婦人科クリニックにご相談ください。

セルフチェックの方法や治療の流れについては処女膜強靭症のページをご覧ください。

処女膜強靭症の検査や治療を行っていない婦人科クリニックも多いため、当クリニック以外を受診する場合は、事前にクリニックに確認しておくと安心です。

膣ダイレーターによる治療

膣ダイレーターは、膣の収縮や狭窄を改善するための医療器具です。通常、以下のような状況で使用されます。

  • ・膣の狭窄や瘢痕組織の治療:手術後や放射線治療後に膣の狭窄が生じた場合。
  • ・骨盤底筋の緊張緩和:膣痙縮や骨盤底筋の過緊張に対する治療。
  • ・性機能障害の治療:膣挿入に対する恐怖や痛み(膣痛症、外陰痛症など)に対する治療。
  • ・ホルモン療法後:更年期や閉経後の女性の膣の弾力性と柔軟性の改善。

医師の指導のもとで正しく使用することで、膣の狭窄の緩和や、性機能の改善に効果が見込めます。

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性交痛は池袋アイリスの婦人科クリニックにご相談ください

性交痛についてクリニックに相談することに抵抗があったり、恥ずかしいと思われたりする方もいらっしゃるかもしれませんが、痛みは身体からの大切なサインです。病気や感染症が見つかった場合は、早期の発見と治療で痛みが取り除けます。

病気でなかった場合も、年齢や体質によるものなのか、心理的なものによるものなのか、痛みの原因を知ることで、その後の正しい対処方法が見つかります。

プライバシーに配慮した池袋アイリス婦人科クリニックでは、さまざまな年齢の女性からの相談を受け付けています。性交痛にお悩みの方は、お気軽にご相談ください。

性交痛に関するよくあるご質問

  • 性交痛があるのですが、どうすればいいか分かりません。病院に行くべきですか?

    性交痛が長期的に継続する場合や、性行為の妨げになるほどの痛みが生じる際は、医療機関を受診してください。婦人科クリニックでは、体質や疾患による性交痛の改善が可能です。心理的ストレスや不安などの精神面が原因と考えられる場合は、心療内科や精神科の受診を勧められることもあります。

  • 性交すると出血と痛みがあるのですが、病気でしょうか?

    初めての性行為でないにもかかわらず、性行為をする度に痛みと出血がある場合、粘膜の損傷、処女膜の異常、性感染症、子宮の疾患などが考えられます。出血や痛みが続いたり、出血量が毎回増えていたりする場合は、早めにクリニックを受診しましょう。

  • 閉経後の性交痛に有効な対策はありますか?

    閉経後の性交痛の主な原因は、エストロゲン低下に伴う膣壁の薄まりや乾燥によるものです。よって、デリケートゾーン用の保湿クリームや潤滑剤・ゼリーの使用、ホルモン補充療法が一般に推奨されていますが、症状が改善されない場合は、子宮筋腫や腫瘍など別の疾患も考えられます。ご不安な方は、婦人科クリニックで精密検査を受けましょう。

  • たまに奥の痛みを感じる性交痛が起こります。受診の必要はありませんか?

    性行為時にまれに奥の痛みを感じる程度であれば、過度な心配は不要です。しかし、痛みを感じる頻度が増えたり、痛みが強くなってきたりした場合は、子宮内膜症や炎症性疾患などの疾患が見つかる可能性があります。我慢せずに婦人科を受診するほか、定期検診を受けておくと安心です。

  • 性交痛があるのですが、カンジダなのでしょうか?

    カンジダ症の症状の一つとして、赤み・腫れによって性交時の痛みが生じる場合があります。性交痛=カンジダと診断できるわけではありませんが、可能性は否定できません。一度婦人科を受診し、検査することをおすすめします。

INFORMATION

2024/07/02
7月・8月休診日:なし